悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「あいよ」

大声で叫んで、夫のオーガストにオーダーするカミーユ。
 
それからカミーユはギルの顔をまじまじと見つめてきた。

「ところであんた、いつも思うんだけど若いのに随分落ち着いているねえ。ここにいる男たちの誰よりも大人しくていい男だよ。恋人はいるのかい?」

「そんなものはいません」

「そうかい? 想い人くらいはいるんだろう?」

「それは秘密です」

ギルがにこっと優美な笑みであしらうと、カミーユはほんのり顔を赤くした。

すかさず、オーガストの怒声が飛んでくる。

「おいお前! うちの嫁をたぶらかしてんじゃねえ!」

そんな風に、食堂で過ごす賑やかな時間がナタリアは好きだった。

生まれてからずっと、城からほとんど出ることなく過ごしてきたので、大勢の人たちに囲まれてガヤガヤしているひとときは楽しくて仕方ない。

甘酸っぱいクランベリージュースを飲みながら、ナタリアが今日もイサクの話に聞き入っていたときのこと。

入り口から兵士のような身なりの男たちが入ってきて、ナタリアは息が止まりそうになる。

彼らのコートの上腕部には、ここオルバンス帝国のシンボルである狼の文様が縫い付けられていた。

それは、リシュタルトの侍従たちだった。

侍従たちは、何やら順々に客に聞き込んでいる。

(どうしてこんなところにあの人たちが……。まさか、私がお城を抜け出していることがバレてしまったの?)

ナタリアはサーッと青ざめ、顔を伏せた。

見つかってしまったらすぐさま報告され、ここには二度と来られなくなってしまう。

幸いカウンター席にいるナタリアたちは彼らに背を向けているため、気づかれていないようだ。

「おや? あいつ、城の役人じゃねえか」