悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

「北大陸のことを知りたい? なんでだ?」

「北大陸には獣がたくさんいるから、仕事がたくさんあるんでしょ?」

するとイサクは、またガハハと豪快に笑った。

「こりゃ随分しっかりしたお嬢ちゃんだな、気に入った。よし、凄腕の獣操師の俺がお嬢ちゃんの願いを叶えてやろう。で、まずはどんなことが知りたいんだい?」

それからイサクは、饒舌に自分の経験談を語ってくれた。

獰猛化した狼が集団で街を襲ったとき、獣操師団の指揮を率先してとった話。

ドラドと対峙したとき、腕を食いちぎられそうになった話、北大陸の王に感謝されて姫の結婚相手にと勧められたが醜女だったので断った話――。

北大陸の地形や、特有の狼の習性、この大陸よりも獣操師が優遇されることなど、ナタリアがまさに知りたい情報を次から次へと教えてくれたのである。

「――それでその狼の獰猛化を沈めたとき、俺のあまりのかっこよさに女どもが腰を抜かして立てなくなったらしく……」

「うんうん、それで?」

モテ話をちょいちょい誇張して挟んでくるのが邪魔だが、それ以外はどれも興味深く、ナタリアは時間が経つのも忘れて彼の話に聞き入った。

「――だけどその狼は、よく見たらその国の王子の獣化した姿だったんだ。俺以外気づいちゃいなかったがな。それから――」

「それからどうなったの?」

ナタリアが瞳をキラキラ輝かせて話に夢中になっているので、イサクの方もまんざらでもないようだった。

次から次へと、上機嫌に新たな話を聞かせてくれる。

「ベル、そろそろ行かないと」

ギルが声をかけてきたところで、ようやく現実に引き戻されるナタリア。

「そうだった。もう帰らないと」

「なんだ、もう行っちまうのか?」

イサクが、残念そうに言う。

「今日のところは帰るけど、また来るから! イサクおじさんも絶対にまた来てね!」

「心配しなくても俺は毎日ここで飯食ってるからいつでも来な。じゃあな、ベル」