「とにかく急ぐのよ、アビー!」
すると、道中で誰かに呼び止められた。
「慌ててどこ行くの? それは何?」
少年の声である。
「あら、レオン様! こちらは妹のナタリア様です!」
「転んで頭を打たれて、王宮医に見せに行くところなんですよ!」
ぼんやりとしたまま、ナタリアは思考だけを機械的に働かせた。
(レオンって、もしかしてモフ番のヒーローの? つまり私のお兄様?)
え、と戸惑うようなレオンの声がした。
「僕に妹なんていたの?」
しまったというように、ドロテとアビーが顔を見合わせた。おそらくナタリアの存在はレオンには秘密だったのだろう。
レオンはリシュタルトと彼の初婚の獣人王妃との間にできた子供だ。
だがレオンの母は、リシュタルトが人間であるナタリアの母と出会ったせいで離縁された。
番とは、そういうものなのだ。
結婚していようといまいと、出会ってしまえば一緒になるのを止められない。
レオンの母は、離縁後床に伏して亡くなったらしい。
すると、道中で誰かに呼び止められた。
「慌ててどこ行くの? それは何?」
少年の声である。
「あら、レオン様! こちらは妹のナタリア様です!」
「転んで頭を打たれて、王宮医に見せに行くところなんですよ!」
ぼんやりとしたまま、ナタリアは思考だけを機械的に働かせた。
(レオンって、もしかしてモフ番のヒーローの? つまり私のお兄様?)
え、と戸惑うようなレオンの声がした。
「僕に妹なんていたの?」
しまったというように、ドロテとアビーが顔を見合わせた。おそらくナタリアの存在はレオンには秘密だったのだろう。
レオンはリシュタルトと彼の初婚の獣人王妃との間にできた子供だ。
だがレオンの母は、リシュタルトが人間であるナタリアの母と出会ったせいで離縁された。
番とは、そういうものなのだ。
結婚していようといまいと、出会ってしまえば一緒になるのを止められない。
レオンの母は、離縁後床に伏して亡くなったらしい。



