悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!

獣人は、本能で一生を添い遂げる番を察知する。

獣人同士だと互いに番認定して、一生涯新婚夫婦のように仲睦まじく添い遂げるのだ。

カミーユとオーガストはふたりとも獣人なので、互いに番認定して深く愛し合っているのだろう。

「番の夫婦って、本当に仲良しね」

しみじみとつぶやくと、ギルが隣で頷いた。

「そうだね。ナタリアも、番に選ばれたいって思う?」

ナタリアはきょとんとしてギルを見た。

悪役令嬢が番に選ばれ愛されるなんて、聞いたことがない。

番なんていう無条件にただただ溺愛されるシステムは、ヒロインのために存在するのだ。

「それはあり得ないわ」

「どうして?」

「だって――」

私は悪役令嬢だもの、という言葉を呑み込んだとき、耳のすぐそばでクンクンと鼻を鳴らす音がした。

ん? と思って振り返ると、顎髭を生やした騎士のような成りの獣人が、ナタリアの匂いを嗅いでいる。

「きゃ……っ」

知らない男の顔のドアップにびっくりしていると、ギルにぐっと体を引き寄せられれた。

「俺の妹に、何か用ですか?」

「いやあ、すまんすまん。ちょっと気になる匂いがしたものでつい」