……す、すごい。


目の前にはテレビでよく見るあの大きな建物。
──────テレビ局。


トートバッグを大事に抱きしめ、いざ中へ。


ドキドキする気持ちを落ち着かせ、受付に向かう。

話す事を何度も頭の中で巡らせてから深呼吸。


「あの…、」


一人の受付の女性に声を掛け、



「累……、いえ。ルイの忘れ物を届けに来ました」




と言った。




──────事の発端は数時間前。

楽しい学校生活にもようやく慣れてきた二週間。みんなのお陰で体調も絶好調…だったのは昨日までの話。



「──────…37度、か」



布団に潜り、まだ変装していない傑をぼーっと眺めていた。

やっぱりかっこいいなぁ、なんて思いつつ。


傑の指が私の頬に触れた。
ちょっとだけひんやりとした感触。

…あ、でも手の平は冷たくない。

手が私の頬を包んでいた。



「休んだ方が良さそうだな」

「………でも、前より元気…」

「前っていつの事だ?去年?それとも小学生の頃か?」



………ど、どっちもです。


「前」というのは、”入院するほどじゃない”と言う意味。伝わらないと思ったけど傑は分かっていたみたい。



「……ご、ごめんなさい…」



その日は平日…にも関わらず、私は体調不良で学校を休むことにした。

はぁ、と溜息を吐く傑。



「紬、俺が傍に…」

「駄目だよ」



今出来る精一杯の笑顔を向けた。