「お邪魔しまーす……」

また、ここに来てしまった。
加藤さんの家に。
あれから加藤さんは、そのまま電車ではなくタクシーを使い、私を再びここに連れてきてくれた。
扉が閉まり、外と内側の世界に境界ができた時だった。
加藤さんが、私を背後から、強く抱きしめてきた。

「よかった……無事で……」
「加藤さん……」

私は、しばらく加藤さんにされるがままになっていた。
だけど……やっぱりこれは気になる。

「どうして……助けに来てくれたんですか……?」
「…………それは…………」
「え?」

加藤さんが、1回私から離れ、そのまま私の手をとってベンチに座らせる。
それから加藤さんも私の横に座り、また無言が続いた。
そして……
「……………………三条さん……だっけ?」
「……え?」

何故、このタイミングで三条ちゃんの名前が?
三条ちゃん、加藤さんに相談した……とか?

「彼女を問い詰めた」
「え!?」

な、なんで!?

「問い詰めって、どういうことですか?」
「どうして君が、その服着てるのって?」

そこから!?
というか、それ!?
加藤さん、自分で人のために買った服なんか覚えてるの!?

「あの服は、あの店で1点しかないんだ。だから君以外は持っているはずがないんだ」

……まじか。
あ、だから三条ちゃん、貰えないって言ってたんだ。
そのこと知ってたから。
でもあの時は、私が買った……ということに、三条ちゃんの中ではなってたはずだから……さぞ混乱したんだろうな……三条ちゃん……。

「それで、三条さんにこの計画のことを聞いた」

加藤さん、それは無理やり吐かせた……ということですよね……。

「それにもう1つ……」

加藤さんは、スマホ画面を私に見せた。

「これは……」
「ずっと人のLINE無視してたのに、このタイミングで既読になって、しかもご丁寧にスタンプまで押されてる。何かあったと考えて当然でしょう?」
「あはははは……」

笑ってごまかすしかない。

「それで急いで会社出て……君があの電車に乗った時、どうにか僕も滑り込みで一緒に乗ることができた」

それは……知らなかった。
確かにオフィスから駅の改札までの距離は10分もないけれども。
一体、どれくらいの距離を、どれくらいの速度で走ってくれたのだろう。
この人は。
私のために。

「本当は……あの男が、君の胸に触ったのを見た時に殺してやりたかったよ」