助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

店から出て、すぐ、三条ちゃんが私の服を引っ張った。
顔が、こわばってる。

「います、きてます、後ろに」

三条ちゃんが、恐怖のあまり、少し声を大きく話してしまっていた。

「待って、変に相手に気づかれちゃいけないから言葉だけで教えてくれる?その人がいる場所」
「は、はい……。すぐ後ろにコンビニありますよね」
「うん、さっき見たからイメージ分かる」
「そこの、雑誌コーナーから……見てるんです……」
「わかった。落ち着いて。三条ちゃんはそっち見ないで。私だけ、なんとかうまく見るから」

私はそう言うと、プライベートスマホを取り出して、地図アプリを開き

「あれ、次どっち行くんだっけー」

とわざとらしく演技をした。
目的地を地図アプリを使って探している風だと、周囲を見渡してもなんら不思議はない。

「ええと……確か目的地はー」

と言いながら、三条ちゃんが教えてくれたコンビニを見る。
そして私は、雑誌コーナーにさっと目線をずらした。
約2秒くらいの時間。
だけど、その時間だけあれば十分だった。
その人が、とてもよく知っている人物だと言うことを認識するには。

「あの……高井さん……顔色悪いですが……どうしました……?」
「あ、うん……なんでもない」

なんでもないことなんか、全然ない。
三条ちゃんに痴漢&ストーカー行為らしきことをしていた人物は…………決して忘れられるはずがない人。
私たちの希望だと、強く信じていた人。
鮫島裕次郎。
今日まさに、内定承諾まで貰い、YAIDAへの入社準備が始まった、奇跡の人材だった。