助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

「はい!ありがとうございます!……そうですね、入社までは引き続き私がサポートいたします。……はい!失礼します!」

鮫島さんの面接予定時刻から3時間程経ってから、私の会社用スマホに、長谷部さんから連絡が入った。
この時私は、たまたま1階ロビーにいた。
というもの、オフィスの自席だと、落ち着かないそわそわした気持ちになってしまっていたので、適当に用事を作っては、外出を繰り返していたからだ。
もちろん、サボりにはならないギリギリのところではあったが。
要件は、鮫島さんに内定を出したいということ。
私は電話の間、何度も喜びで叫びたくなる気持ちをギリギリ抑えていた。
そして電話が切れた瞬間

「よっしゃ!!!」

と、ロビーに私の、普段は発しないような甲高い雄叫びが響き渡ってしまった。
多少なりと、人がいた空間でやらかしてしまったので、何事かと私を眺める社員も数名いた。
その中で、見たことある人もいたので、かなり恥ずかしくなったので

「し、失礼しました!!」

と誰に対してしたのかも分からないお辞儀をして、その場を去ろうとした。
その時、急に背後から目隠しをされた。
驚いてしまい

「きゃあ!!」

と悲鳴をあげてしまった。

「ちょっ、驚きすぎだろ!」

どうも聞き覚えのある声がするなと思って、目隠しされた手を払うと同時に振り返ると

「かっ、河西君……」
「嬉しいのは分かるけど、結構目立ってた」
「……ははは」

どこから見ていたのだろう。

「その様子じゃあ、例の案件クリアか」
「あ、そうなのそうなの!今連絡もらって」
「あれ?俺、元木さんからも聞いてたけど、確か今日だったろ?面接」
「うん」
「にしては、結果出るの早くないか?」

私は、少しだけ周囲を見渡し、自分の半径10m以内には河西君しかいないことを確認すると、河西君の耳元で小声で話す。

「経歴、人柄共に申し分ないし、今他社さんもにも応募してるって話を鮫島さんがしたから、役員さん達が早く内定出せって、せっついたらしいんだ」
「そうか、良かったな」

そう言うと、河西君は私の体をそっと抱きしめた。

「ちょっ!?河西君!?」

私は驚いて、河西君の体を突き飛ばしてしまった。

「なっ……何しようと……?」
「何って……こう言う時は、ハグだろ」

河西君は、さも当然と言わんばかりに両手で人体を抱きしめるような仕草をした。

「さすがに、ハグは……ちょっと……」
「お、おお、そうか。悪かった、つい」
「そ、そうだよ……さすがに驚いたよ……ははは」
「だ、だよな……」

それから少しだけ、沈黙の時間はあったが

「じゃ、俺ちょっと一服してくるわ」

と、タバコを吸うジェスチャーをして、出て行ってしまった。
私は、河西君と一緒にオフィスに帰らなくてもいいことに、ホッとしてしまった。