「あれ?」
「どうしたの、河西君」
トイレから私達の座席に戻る時、急に河西君が立ち止まった。
「なあ、聞き覚えのある声しねえ?」
「え?」
私もよーく耳を澄ませてみる。
「…………で…………だろう…………」
「た…………が…………はい…………」
他の客達の声が大きくて、なかなか聞き取れない。
でも、確かに私はこの声を知っている。
「……どこ?」
「たぶん、そこの扉の中」
河西君が言うその場所は、ラッキーなことに隙間が少し開いていた。
なので、私と河西君は、目を合わせてお互いが同じ意見なのを確認してから、そっと覗き込んだ。
やっぱり……!!!
「あっ!」
と私が声をあげそうになったところを、河西君に口を塞がれた事で、どうにか盗み見バレは回避できた。
そこには、加藤さんと井上さんが、2人で何かを話している。
2人っきりで。
井上さんも加藤さんも、何やらにこやかに微笑んでいる。
あんな加藤さんの笑顔……私、見たことない……。
胸がつきんと、痛む。
私は
「……行こう、河西君」
と、小声で言う。
「おい、話しかけねえの?」
「邪魔して……明日仕事が大量に降ってくるのは困る」
「確かに」
河西君と私は、また目を合わせて頷いて、そっと足音を立てずに離れた。
廊下を歩きながら
「やっぱあの2人、できてるんかねぇ?」
「え……!?」
「いや、あの2人……ちょいちょい噂はあるんよ。なんだかんだ仕事の相性いいし、見た目も……釣り合うって言ってる人、結構いるっぽい」
「ふ〜ん……」
確かに。
あの2人を並べた写真が、ちょっとおしゃれな雑誌に使われていても全く違和感はない。
それに……。
「わざわざ隣同士に座ったりしないだろ?テーブルの向かいっかわ空いてるのに」
河西君が、ダメ押しの一言を追加する。
それってつまり……。
片時も離れたくない的な……。
確かにここ数日、あの2人はいつも一緒にいた。
とうとう、プライベートを仕事にまで持ち込んだということか?あの上司は。
人には普段から、仕事に集中しろ、余計なことを考えるなとチクチク言ってくるくせに……?
あー……なんか、今ものすっごいムカムカする。
「高井さん、ついたよ」
「あっ」
私は河西君に手を掴まれなければ、そのまま出口から外に出てしまっていたかも知れなかった。
ああ……それもこれも、全部、全部、ぜーんぶ、あのクソ上司のせいだ!!
「河西君……飲むよ」
「……おう、いいけど、水も飲めよ、頼んどくから」
私は、河西君の言葉を話半分に聞いて頷いた。
「どうしたの、河西君」
トイレから私達の座席に戻る時、急に河西君が立ち止まった。
「なあ、聞き覚えのある声しねえ?」
「え?」
私もよーく耳を澄ませてみる。
「…………で…………だろう…………」
「た…………が…………はい…………」
他の客達の声が大きくて、なかなか聞き取れない。
でも、確かに私はこの声を知っている。
「……どこ?」
「たぶん、そこの扉の中」
河西君が言うその場所は、ラッキーなことに隙間が少し開いていた。
なので、私と河西君は、目を合わせてお互いが同じ意見なのを確認してから、そっと覗き込んだ。
やっぱり……!!!
「あっ!」
と私が声をあげそうになったところを、河西君に口を塞がれた事で、どうにか盗み見バレは回避できた。
そこには、加藤さんと井上さんが、2人で何かを話している。
2人っきりで。
井上さんも加藤さんも、何やらにこやかに微笑んでいる。
あんな加藤さんの笑顔……私、見たことない……。
胸がつきんと、痛む。
私は
「……行こう、河西君」
と、小声で言う。
「おい、話しかけねえの?」
「邪魔して……明日仕事が大量に降ってくるのは困る」
「確かに」
河西君と私は、また目を合わせて頷いて、そっと足音を立てずに離れた。
廊下を歩きながら
「やっぱあの2人、できてるんかねぇ?」
「え……!?」
「いや、あの2人……ちょいちょい噂はあるんよ。なんだかんだ仕事の相性いいし、見た目も……釣り合うって言ってる人、結構いるっぽい」
「ふ〜ん……」
確かに。
あの2人を並べた写真が、ちょっとおしゃれな雑誌に使われていても全く違和感はない。
それに……。
「わざわざ隣同士に座ったりしないだろ?テーブルの向かいっかわ空いてるのに」
河西君が、ダメ押しの一言を追加する。
それってつまり……。
片時も離れたくない的な……。
確かにここ数日、あの2人はいつも一緒にいた。
とうとう、プライベートを仕事にまで持ち込んだということか?あの上司は。
人には普段から、仕事に集中しろ、余計なことを考えるなとチクチク言ってくるくせに……?
あー……なんか、今ものすっごいムカムカする。
「高井さん、ついたよ」
「あっ」
私は河西君に手を掴まれなければ、そのまま出口から外に出てしまっていたかも知れなかった。
ああ……それもこれも、全部、全部、ぜーんぶ、あのクソ上司のせいだ!!
「河西君……飲むよ」
「……おう、いいけど、水も飲めよ、頼んどくから」
私は、河西君の言葉を話半分に聞いて頷いた。



