お願い、私を見つけないで 〜誰がお前を孕ませた?/何故君は僕から逃げた?〜

memo凪波

あの人は、私に普通の恋人としての振る舞いを求めてくる。
特にデートをしようという言葉は、何度も聞かされた。
それを私は拒絶する。
あの人の今を考えれば、それは得策ではないから。
あともう少し頑張れば、声優に関するランキングを総なめにしてくれるだろう。
すでに、あの人にガチ恋してるファンも増えてきた。
事務所に送られてくるプレゼントの質も量も変わってきた。
最初は、ぽつぽつと、手紙だけだったものが、気がつけば1個数万円するようなブランド品まで贈られるようになっていた。
私からの以外はいらないと、あの人は受け取りたくないと言った。
でも私は、わざと受け取らせた。
あの人には、自覚をしてもらわないといけない。
あの人が好きだと言う女の子がたくさんいるということを。
あの人がたくさんの女の子に夢を見せているのだと。
そのおかげで、生活ができているのだと。
だから、プライベートに少しでも女の影を見せてはならないということを。
あの人に、いつもその話をすると、納得できないという顔をされてしまう。
だから、室内にいる時だけは、私を自由にしていい権利をあの人に与えることにした。
あの人が好きな時に、好きなように私を扱ってもいい権利。
その代わり、外では他人のフリをすることを条件にしたけれど。
それを最初に言った時、あの人は私をその場で押し倒して、無理やりされて、中に出された。
妊娠したらどうするの、と怒った時、あの人は笑って言った。
そしたらずっと僕と一緒にいてくれるね、と。
でも、私はそれに答えられなかった。
私は、明日朝一で事務所に呼び出されている。
一路朔夜との関係について、とあったから、もう気づかれているのだろう。
何を言われるのかは、だいたいわかっている。
そうしないと何が起こるかの、危険性も知っている。
だって、私がそれをしたことがあるから。
頭が痛い。