「五十嵐美央さんは、耳が聞こえないらしくてね。それにもうずっと外に出ていないと聞いた」

「外に出てない?」

「あぁ。幼い頃に嫌なことがあって外が怖くなってしまったと五十嵐社長は言っていた。だからもし、哉斗がその子を選ぶなら覚悟がいるかもしれない」


 確かに聞く限りでは大変かもしれないと思うが、俺はこの子と話してみたいなって思った。


「俺は、まず会ってみたいです」

「そうか。では、先方と連絡を取るよ」



 それから話はとんとん拍子に決まっていった。ひと月経ち、俺はやっと会わせてもらえることになった。


「初めまして」


 実際に会った彼女は本当に可愛くて、まるで絵本から出てきたお姫様みたいで恋に落ちるのは一瞬だった。




                       『彼女と出会うまえ。哉斗side』END