『…なにそれ可愛い』
『んっ、あまねくん、…ここ学校、』
『───大好きだよ、彩』
もし彩が『逃げたい』『もう嫌だ』って少しでも弱音を一瞬でも吐いたとしたならば。
俺は迷わず手を掴んで、誰もいない場所へと逃げてしまうつもりだった。
それくらい、いつだって覚悟してた。
まだ何もできない子供だとしても。
見て見ぬふりをする大人なんかよりずっとずっといいだろうって。
『…私も…大好き、です』
その笑顔が『麻痺』という、後々俺が名付けるいじめられっ子特有の副作用みたいなものだとは知らずに。
そんなものを何ひとつ気づけなかった馬鹿な俺は。
本当はその笑顔の裏にある孤独を、見て見ぬふりしていたのかもしれない。
『───……死ん……だ……?』
その日は人身事故の影響で登校時間に遅れた日。
そしてその電車に飛び降りた存在が、大好きだった女の子だなんて。
隣クラスの担任から『事故で亡くなった』と告げられた言葉。
『っ、高槻…!!』
『ふざけんな…っ、なに言ってんだよ…!!』



