「涼夏ちゃんすごいねぇ、高校生なんか遊びたいときなのに」


「…いえ」



だって友達、いませんから。

それに家計を支えたいんですわたし。


なんて言っても仕方ないから、バイトリーダーでもある佐々木さんとのプライベートな会話はそれだけ。



「まずはタバコの銘柄を覚えることからだね。番号ふってあるけど、名前で言ってくるお客さんがほとんどだから」


「そうなんですか…」



母子家庭なんか珍しいことじゃない。

母親は毎日遅くまでパートをして働いてくれて、わたしも高校からはバイトをしようとずっとずっと思っていて。


念願の初出勤、面倒だなぁ…と内心ため息。



「常連客もいるからね、まぁやってればすぐ覚えられるとは思うけど」


「はぁ…」



今のも返事に見せかけた、ため息。

だけど40代の佐々木さんには伝わってくれていないからこそ出来たもの。


働くってこういうこと。

嫌だ面倒って思っても、お金を稼ぎに来てるんだから我慢が当たり前らしい。