「はい」
答えになってないかもしれないけど、わたしはコクンとうなずいた。
自分が自分じゃないみたいだ。
こんなに誰かに言葉を伝えたのは初めて。
伝えたくて言葉を発したのも初めて。
「───…へぇ」
「っ…!いた…っ」
カプッ───。
それは首筋を噛まれた痛み。
先輩の歯がわたしの肌を傷付けて、いたぶって。
「なに、するんですか、」
「…噛むって言ったでしょ」
「それは拒否したらじゃ、」
「いーや、生意気言ったら」
頭のおかしいサイコパス先輩のお帰りだ。
狂った笑顔は目の前にあって、わたしの苦痛に歪む顔を見て笑う。
そんなものを分かっていたからこそ、少し目を背けてぐっと唇を噛んで耐えれば。
「───ちゃんと見せてよ、その顔」
ぐいっと強引にも視線を合わせられる。
そのまま顔を背けられないように固定されて、その中で微かに開いた唇はわたしの首筋に落ちてきた。



