「そろそろ帰りますか?」
「だね、暗くなってくるし」
「…先輩、先帰っていいですよ」
「なんでよ」
やっぱり先輩は危機感が薄い。
クラスメイトの女子たちはわたし達のことをヒソヒソ噂立てし始めてる。
わたしの一番の心配は、その矛先が先輩にも向かわないかってこと。
「時間、ズラしたほうがいいです。わたしと一緒のとこ…見られたらまずいから」
「…くだらないこと言うね」
最初と同じ台詞。
わたし、覚えてる。
わたしの私物に触ったりする人なんか初めてだったから。
ましてやお弁当を遠慮なく食べてきたひと。
「じゃあ、せめて間隔空けて歩くとか…」
お弁当箱をしまって、スクールバッグを肩にかけて。
タイヤからトンっとジャンプするように降りたわたしに続いて先輩も腰を上げた。
「あ───…涼夏、」
そんな先輩に名前を呼ばれ、無意識に振り向けば。
「っ、」
傾いた影がぐらっと、わたしへともたれ掛かってくる。



