「お、いた」
誰も居ない教室、涼やかな気持ちで学級日誌を書いている放課後に先輩は現れた。
気まぐれな猫だ。
そう、表すならそんなところ。
「日直?普通それって2人でやるもんじゃないの?」
「…わたしを誰だと思ってるんですか」
「あぁそうだ、いじめられっ子だったね」
そう、だからこんな仕事だって当たり前のように任される。
でもこの時間は嫌いじゃないから苦痛でもなくて。
吹奏楽部や運動部の音が微かに聞こえてくる中で動かすシャーペン。
「先輩、…今日のお昼休みは、」
「んーなに、寂しかった?」
「いえ全然」
「…嘘でもここは“はい”って言ったらどーなの」
わたしそんなキャラじゃないですから。
可愛げも愛嬌もない冷淡ロボット、それは先輩がよく知ってるはずでしょ。
ただ今日は、ちょっと違う理由があるっていうか…。
「字、綺麗だね」
「え…?」
「逆さから見ても綺麗ってすごくない?」