「それだけはないです。わたしは自分でお母さんの子だと思ってません」


「…どういう意味?」



間隔空けてすっごい端っこに座ってるけどさ、ここって涼夏の家じゃん。

いつも思ってたけど変な謙虚さがあるよね。

そこに謙虚必要?って思うくらいに遠慮ばっかりで。



「言うなよそんなこと。それお母さんすっごく悲しむでしょ」


「…だって、」



もう少し近くなきゃよく聞こえない。
普段からもっと声張ってほしいよ本当に。


ふっと瞳を落として、諦め半分の顔。

それが俺が思うこいつの「可哀想な顔」だ。



「───…あんなふうに、笑えないから」



でも、聞こえた。

それはもうしっかりと俺に届いてきた。



「お待たせ~!これスッゴくジューシーで美味しいのよ~!」



テーブルに運ばれた夕張メロン。


瑞々しいオレンジ色が輝く表面、ふわっと広がる果汁の匂い。

あ、これ普通に高くて良いヤツだって思うほどに艶やかな色をしている。