変わった親子だ。


不器用でいて、そうじゃない。

ちゃんと伝わっている。


だけど言葉にしてしまったら娘の優しさを閉じ込めてしまうから、母親はすべてを理解したうえであえて黙ってる。

その代わり陽気に笑っていて。



「ありがとうね涼夏。天気が良いからたくさん干しちゃった!」


「お母さん、…昨日のメロン、あったでしょ。あれ先輩に出してあげたら」



あ、ほんとだ。

確かにわざわざ自分から言ってくれる。


しーっと、人差し指を口元に当てて嬉しそうに俺に笑いかけた涼夏のお母さん。



「そうね!3人で食べましょ!」


「え、いいんですかメロンなんて。高級じゃないですか」


「いいのいいの、ちょうど貰い物だったの!夕張メロン!2人で食べるなんて勿体ないじゃないっ!」



普通は2人で独占したいでしょ。

それなのに「勿体ない」なんて。


トタトタと母親がキッチンに駆けて行って、今度は娘と2人きり。



「ふっ…元気なお母さんじゃん」


「…よく言われます」


「でも母親似だと思うよ」



複雑そうな顔が俺を捉えてきた。