「だけど、高槻くん」
まさかのそこで俺に振られるとは。
返事は振り向くことで表した。
「あの子を、涼夏を…“可哀想な子”とは絶対に見ないであげてほしいの」
たったいま俺が思っていたことさえ見抜かれたようで、一瞬ドキっとした。
だけどこの人はきっとこういう人なんだろうと。
娘が大人しいからこそ、娘の分まで元気に笑ってる愛情ある母親。
「可哀想じゃない、みんなと変わらないって…そう見てあげてくれるだけでいいから」
「…わかりました」
「ふふ、ありがとうね」
たぶん、あいつも笑ったらこんなふうに朗らかな笑顔をするんだろう。
「大人しいけど、ちょっと人見知りなだけで…本当は誰よりも優しい子なのよ」
冷淡ロボットって言われてるんですよ、あなたの娘さんは。
ひどいあだ名でしょ。
どうにも、前なんか階段から突き落とされたらしいんです。
「高槻くんのこと、よほど信頼してるのね」



