なんだろ…なんでこいついじめられてんだろって、一瞬思った。
ふつーじゃん。
優しい母親がいて高校生の娘がいて、どこにでもいる親子でしかない。
「…あの子、本当は学校で周りから良く思われてないでしょう」
「え?」
やっぱり母親。
娘の嘘なんかとっくにお見通しだ。
「昔からそうなのよね。父親が小さいときに出て行ってしまって…周りから何言われても私が傷付かないように我慢させちゃってて、」
ベランダに干された洗濯物を取り込む背中。
妙に小さく見えて、それなのに何よりも強くも見えて。
あなたの娘は毎日毎日クラスメイトからのいじめに耐えてますよ。
…なんて、そんな話をされたら言えなくなってしまった。
「1度、雨でもないのに泥だらけで帰って来たことがあったの。
…そのときも転んだだけだって頑なに押し通してね」
すっごい想像できる。
そのときもいつもみたいに無愛想でクール装って、つまんない顔で言ってたんだろうね。
本当、可哀想で憐れなシンデレラだ。



