「ほら、どうぞ?」


「背中向けててください」


「それ俺のジャージじゃん。せめてお礼とかさ、あるでしょ」


「ありがとうございました」



「いや違くて」と、先輩はいやいやと呆れたように首を振る。


言葉以外のお礼って逆に何があるの…?

たとえば何かを奢るとか?


そんなわたしの考察は全てハズレ。



「カラダで払う、とか?」


「…お返しします。別に保健室から借りるんで」


「うわ、ほんとつまんない」


「つまらない冷淡ロボットですから」



諦めたように背中を向けてくれた先輩。


タオルで隠しながらも何とか着替えて、少し大きくてブカブカなジャージが身体を包む。

…これは絶対に先輩のものだってバレたら駄目なヤツ。



「…あ、てか俺このあと体育だし」


「なんでそれ先に言わないんですか」


「いま思い出したから」



そんなのもっと早くに思い出してよ…。

この面倒な着替えをまた繰り返さなきゃになった。


ぐいっと脱ごうとしたが、ストップをかけたのは先輩で。