その声は聞いたことないくらいに優しい。

目付きだって今までと違う。


先輩、あなたはいま、だれを見ているの───…?



「……嫌じゃ、…ない…です、けど」


「…なんか生意気」


「っ、」



そして再び近づいた唇は首筋に触れて、カリッと歯を立てた。


はぁっと聞こえる吐息が熱い。


ぎゅっと目を閉じて拳を握るように耐えていると、その手が解されるように繋がれた。

そして指が1本1本、絡め取られる。



「…どこ触られた?」


「…さわられて、ないです。押し倒されて髪引っ張られて、服破られ───…」



言い終わる前にぐいっと引かれたかと思えば、反応できない素早さで気づけば傍らのベッドに仰向け状態。

状況を理解するより前に先輩が覆い被さってくる。



「ムカつくね、それ」



先輩も同じことするの?

わたしに、それをする?


ほら、もうとっくに狂ってしまってる。

先輩にそうして欲しいなんて思ってるわたしは、狂ってる。



「先輩、転校しても…メールしてくれますか」


「する」


「また、ご飯…食べに来てくれますか」


「行く」