「はい涼夏、どーぞ」



差し出されたアスパラベーコン巻き。

わたしのお弁当には必ず入っているそれを、先輩は今では当たり前のように差し出してくれる。



「お味はどう?」


「…おいしい、です」


「そりゃよかった」



少し多めに作ってほしいとお母さんに頼んだ1つのお弁当。

その意味は誰にも言えない。



「うっそ、え、あれUFOじゃん!」


「えっ」



先輩が唐突に指を差した先───お目当ての未確認飛行物体は、見つからず。


───カシャッ。


そんな音だけが打ち付ける雨の音に響いた。



「消してください、今すぐ」


「レアじゃん。涼夏のこんな顔未だかつて見たことないんだけど」


「先輩、さすがに怒ります。スマホ水没しても知りませんよ」



そもそもこんな雨の中にUFOなんか居るわけない。

そんなの考えなくても分かることなのに…。


先輩といると、調子が狂う。

狂ってる先輩につられたみたいに、狂う。



「ほら映って。てか笑って」



肩を引き寄せられるように、先輩の腕が背中に回った。