ドクドクドクドクと、先輩の心臓が足早に鳴っている。
「ほんとに、空…」
「もういいって、わかったから」
ぎゅうっと、それ以上にまた抱きしめられてしまった。
それだって、わたしを通して彩にしているとしても。
その言葉だってわたしの名前を言ってるけど、すべては彩への贈り物だとしても。
「どうして」なんて、やっぱりわたしは思えないから。
「もうさ、リード付けるよ本当に」
…なに言ってるの先輩。
リードって、犬に付けるような…?
「彩にも、リード付けてたんですか」
「…付けるわけないでしょ」
「…わたしはロボットだから、人間に見られてないってことですか」
「あーめんど。ほんと、面倒」
面倒ならそれこそ放し飼いにすればいいのに。
わざわざリードで繋げて飼い主さんに面倒だと思われるくらいなら、犬からしてもそのほうが嬉しい。
「…夏祭り以来メールも返さないし、お昼だっていつものとこ居ないし。なんで?」
なんで?って…。
そんなのわたしが先輩と関わる理由が無くなってしまったからだ。



