お母さんにメールを打つ。
その指が震えてしまって上手く打てないわたしを、先輩は「貸して」と代わりに打ってくれた。
「…浴衣、いいじゃん」
「……先輩も」
「…花火、行く?」
確かあまり人に知られていない極秘スポットがあるんだっけ。
でもお祭りって知り合いに会ってワイワイするためにあるようなもの。
先輩は知り合いがたくさんいるから、そんなスポットは知らなくていいはずなのに。
「ん?いつもより元気ないみたいだけど」
「…人に、酔って…しまって」
「ふっ、じゃあ行こう」
でも知っているってことは、わたしみたいな子が知り合いに居たってことだ。
今だって慣れた手付きで手を取られて引かれてる。
その手を握り返していいのか分からなかったから、ぎゅっと瞳を閉じた。
「俺って天才」
「…先輩、いつの間に四次元ポケット拾ったんですか」
「お前だんだん冗談が身に付いてきたよね」
小高い丘にある目立たない神社。
まっすぐ見つめる先にはキラキラと灯るきらびやかな光が並んでいて、たくさんの町人で溢れてる。



