あーあくるちゃん帰っちゃった。

「……」
 
 コイツら、今日ぐらいしか会えないと思って告ろうとしてたよな?

 マジで意味わかんな———

「七瀬!!」
「兄貴!!」

「え?」

シュー!!!

バタン。

 スプレーのようなものをかけられて、俺はどうやら気絶してしまったらしい。



ザワザワ。

 ざわめく周りに呆然と立ち尽くす。

 どうやら親と逸れたようだ。

 すると、1人の少女がドレスの裾を持ちながら僕の方に近づいてきた。

「有栖胡桃です、こんにちは七瀬くん!」
 
 その少女は、礼儀ただしく名乗ったかと思えば、明るく聞いたことのないぐらい優しい声で、七瀬くんと俺の名前を呼んでくれた。