こっそりマンションを抜けて、町を歩く。

 ……こんな建物があったんだ……。

「夜毎!これ美味しそう〜」

「本当だね、食べる?」

「うん!」

「莉乃、これ食べない?」

「いいよ!」

 町は、中のいい大人のカップルのような人がいる。

 私も、ななちゃんとこんな風になりたい。

ドンッ

「きゃっ……!」

「大丈夫か、結楽」

誰かにぶつかってしまって、相手はカップルの女の人だった。

「ありがとう」

彼氏さんか旦那さんかはわからないけれど、手を差し出している。

「す、すみません!」

ペコペコと頭を下げて謝る。

「大丈夫ですよ、あなたは?」

「あ、大丈夫ですっ……!」

「ふふっ、ならよかった」

 行ってしまった……。

 器の広い人でよかった。

 にしても、キラキラの、めちゃくちゃ高そうなお揃いの指輪をつけていた。

 ……。

 また涙が込み上げてきて、思わず路地裏に入った。