次の日。

 朝私たちは珍しく早く目覚めた。

 というのも、自分からというよりかは、目覚めさせられたの方があっているかもしれない。

 なにがあるかというと、昨日の夜、有栖財閥社長、つまりお父さんに呼ばれてしまったのだ。

 なぜ呼ぶのか尋ねても、一向に口を割ってはくれなかった。

「くるちゃん、ネクタイやって……」

「はいはい、こっちおいで」
 
 ななちゃん、とっても眠そうだなぁ。

 私もはっきりいって結構眠い。

 いまの時刻は4時半だ。

「胡桃様、七瀬様、もう少しでお時間でございます。」

 玄関越しに執事の声が聞こえ、余計に焦りだす私たち。
 
「は、はーい!!ほら、ななちゃん、カバン持った?」

「持った!あ、くるちゃんスマホ!!」

「わぁぁ!ありがと!!」

 ドタバタドタバタして、私たちはやっと支度を終えて、マンションの駐車場に止めてある車に乗り込んだ。

「何分ぐらいかかりそう?」

「早くて2時間でございます」

「わかった」

 はぁぁっ……どうして有栖家の実家はそんなに遠いのだろう。

「ななちゃん暇だよぉ……」

「ふふっ、俺ぜんっぜん暇じゃない」

 ななちゃんはにこにことしながら肘掛けに体重をかけて私のことを見つめてる。

「……おバカ。ななちゃんのバカぁ。」

 2時間も、なにしようっ……。

「はぁぁっ……暇だぁ……」

「胡桃様、映画でもご拝見したらどうでしょうか?」

「いいえ胡桃様、胡桃様のお好きな飲み物や食があります」

「いえいえ、胡桃様、お友達の雪奈様に連絡をしてはどうでしょう?」

「えっ……」

 あ、あれ……?見覚えが、ない……。

 私に暇つぶしの提案をしてきた執事さんたち。

 そもそも、今日は様子がおかしかった。

 乗り込む車も、いつもは普通の黒い車なのに、今日は有栖財閥特別性のリムジンだった。

 まぁそのことは、2時間も実家に行く時間がかかるから仕方がないと考えれば、おかしくもないとは思った。

 ……でも、もっとおかしかったのが、今日は妙にイケメンの若い執事さんが多かったことだ。

 ……それも、10代後半、20代前半ぐらいの人だ。

 ななちゃんがむすっとした顔をしている。

 いつのまにか、私の隣にはななちゃん、そして執事さんが座っている。

「……ななちゃん」

「……どうしたの」

「可愛い女の子がいなくて、よかった」