「七瀬よりは頭いいと思うけど桃瀬くん」

「李津は黙ってて!」

「たしかに、ななちゃんよりはももちゃんの方が頭いいかもね!」

「え、ヒドクナイ?くるちゃん?ひどいよ?」

「ふふ、嘘だよ、ちょっとだけ」

 ちょっとだけ嘘ってことはほぼ本当じゃん……。

「ひどいよぉくるちゃんっ……」

「あ、あはははっ……。まぁ、ななちゃんより私の方が頭はいいけどね〜」

「ひどいってぇっ……」

 たしかに、くるちゃんの方が成績優秀だけどっ……。

「くるちゃん体育できないじゃん!」

「女の子だから仕方ないんです〜」

「そんなの結論になってないっ!!」

「ううっ……ごめんねっ……私、運動音痴で……」

 くるちゃんは体勢を変えて、上目遣いでうるうるした目で僕を可愛く見ている。

「っ……ずるいよくるちゃん……可愛いね」

 そう言いながらぷっくりと愛らしいくるちゃんの唇にキスをした。

「……そのイチャイチャも、もうすぐなくなるからね。ごめんね〜胡桃、ごめん帰るね」

「あ、うん!またね〜」

 李津が帰ったことを確認して、くるちゃんをソファに寝転がせた。

「……?ななちゃん?」

 くるちゃんの上に座って、くるちゃんの目をじっと見つめる。

「だめだよ?李津に好きとか言ったらね」

「ま、まさかっ……禁断症状が、解けたのっ……?」

「ふふっ、どうだろうね」

 いま俺がとても怖い顔をしているのか、くるちゃんの目に涙が見える。

「あ、あのっ……」

「ん?どうしたの?」

「怖いよっ……?ななちゃん、や、やめてっ……?」

「ふふっ、大丈夫、なにも怖くないよ」

 そう言いながら優しくくるちゃんの小さな頭を撫でる。

「そ、そうだっ……!りーくんっ……」

 そう言ってスマホを取ったくるちゃんからスマホを奪い取る。

「だめだよ?」

「っ……」

「はいは?」

「はいっ……」

「……それだけ?」

 もっと他にいうことあるよね?

「ご、ごめんなっ……」

「ん?」

「ごめんな、しゃいっ……」

「ふふっ、いいよ」

「……!あ、ありがとうっ……!!」

 そう言ったくるちゃんの愛らしい目からはポロポロと涙が溢れていた。

「ごめんね、そんなに怖かったか」
 
 くるちゃんのことを起き上がらせて、優しくぎゅっと抱きしめると、くるちゃんの力が抜けていくのがわかった。

「怖かったっ……」

「もう怖い目に遭いたくなかったら、李津に勘違いさせるようなこといっちゃだめだよ?」

「うんっ……」

 くるちゃんはポーッとしながらそう返事をした。

「ふふっ、可愛い。大好き」

 そう言いながら今度は瞼にキスを落とした。

 くるちゃん、俺の可愛いくるちゃん。

 李津なんかには、絶対に、なにがっても渡さないからね。