「まあ……滝田くんお酒臭かったし、怖かった
って言うか」
嫌だった。
とまでは言えず、そう答えて口を尖らせた蛍里
に、滝田は、はは、と自嘲の笑みを浮かべる。
そうして、息をついて言った。
「確かに、色々と最悪だったな。専務にはいい
ところ、持ってかれちゃうし。何やってるんだろ
うな、俺」
最後の方は独り言のようにそう言って、滝田が
窓の向こうに目を移す。蛍里は“専務”というその
ひと言に、鼓動を鳴らしながらも、彼と同じ風景
を見た。滝田が口を開く。
「本当は、少しずつ俺の気持ちに気付いてもら
って、少しずつ俺を好きになってもらって。それ
から、って思ってたんだけど……」
夜の闇に消えてしまいそうな、そんな声だっ
た。滝田がまた蛍里を向いて、熱のこもった
眼差しを向ける。
蛍里は、ただ黙って彼の唇が動くのを見つ
めた。
見つめるしか、なかった。
「絶対、大事にするから。いまは俺のこと、
好きじゃなくても、構わないから。俺と、付き
合ってください」
それは滝田らしい、まっすぐな愛の告白
だった。
その想いに、その眼差しに、蛍里はぎゅう、と
胸を締め付けられてしまう。
この人を好きになれれば、きっと、幸せでいら
れるだろうと、思う。真面目で、誠実で、誰から
も好かれる滝田なら、きっと、どんな時も自分の
手を引いて歩いてくれるに違いない。
なのに、やはり、首を縦に振ることは出来なか
った。こんな時でさえ、専務の顔が脳裏に浮かん
で消えないからだ。
彼の「愛している」という声が、耳に残って
いる。
それだけでまた、胸が苦しくなるほどに、
自分は彼が好きなのだ。
蛍里は唇を噛んだ。
滝田を失うかもしれない。
それでも、答えないわけには、いかない。
「滝田くんの気持ち、すごく嬉しいし、わたし
も滝田くんのこと、本当に大事なんだけどね……
でも、ごめんなさい。やっぱり、そういう風に
は」
どんなに言葉を選んでも、滝田を傷つけること
は避けられないだろう。それでも、少しでも自分
の言葉が優しく伝わってくれることを祈りなが
ら、蛍里は口にした。
滝田が目を伏せる。
何かを堪えるように、唇を噛んでいる。
「そっか。やっぱり……ダメか」
ようやく、呟くようにしてそう言った彼の声
が震えていて、蛍里の胸を苦しくさせた。
彼にこんな顔をさせたくなんかないのに、
自分の心は彼を選べない。どうにも、ならない。
滝田が顔を上げた。蛍里の顔を、覗く。
「もしかしてさ……専務のことが、好き?」
その言葉に、蛍里は目を見開いた。
もう、本当のことを言ってしまって、いいの
だろうか?一瞬、そう迷いながらも、蛍里は首
を縦に振る。滝田が息を漏らして、笑んだ。
って言うか」
嫌だった。
とまでは言えず、そう答えて口を尖らせた蛍里
に、滝田は、はは、と自嘲の笑みを浮かべる。
そうして、息をついて言った。
「確かに、色々と最悪だったな。専務にはいい
ところ、持ってかれちゃうし。何やってるんだろ
うな、俺」
最後の方は独り言のようにそう言って、滝田が
窓の向こうに目を移す。蛍里は“専務”というその
ひと言に、鼓動を鳴らしながらも、彼と同じ風景
を見た。滝田が口を開く。
「本当は、少しずつ俺の気持ちに気付いてもら
って、少しずつ俺を好きになってもらって。それ
から、って思ってたんだけど……」
夜の闇に消えてしまいそうな、そんな声だっ
た。滝田がまた蛍里を向いて、熱のこもった
眼差しを向ける。
蛍里は、ただ黙って彼の唇が動くのを見つ
めた。
見つめるしか、なかった。
「絶対、大事にするから。いまは俺のこと、
好きじゃなくても、構わないから。俺と、付き
合ってください」
それは滝田らしい、まっすぐな愛の告白
だった。
その想いに、その眼差しに、蛍里はぎゅう、と
胸を締め付けられてしまう。
この人を好きになれれば、きっと、幸せでいら
れるだろうと、思う。真面目で、誠実で、誰から
も好かれる滝田なら、きっと、どんな時も自分の
手を引いて歩いてくれるに違いない。
なのに、やはり、首を縦に振ることは出来なか
った。こんな時でさえ、専務の顔が脳裏に浮かん
で消えないからだ。
彼の「愛している」という声が、耳に残って
いる。
それだけでまた、胸が苦しくなるほどに、
自分は彼が好きなのだ。
蛍里は唇を噛んだ。
滝田を失うかもしれない。
それでも、答えないわけには、いかない。
「滝田くんの気持ち、すごく嬉しいし、わたし
も滝田くんのこと、本当に大事なんだけどね……
でも、ごめんなさい。やっぱり、そういう風に
は」
どんなに言葉を選んでも、滝田を傷つけること
は避けられないだろう。それでも、少しでも自分
の言葉が優しく伝わってくれることを祈りなが
ら、蛍里は口にした。
滝田が目を伏せる。
何かを堪えるように、唇を噛んでいる。
「そっか。やっぱり……ダメか」
ようやく、呟くようにしてそう言った彼の声
が震えていて、蛍里の胸を苦しくさせた。
彼にこんな顔をさせたくなんかないのに、
自分の心は彼を選べない。どうにも、ならない。
滝田が顔を上げた。蛍里の顔を、覗く。
「もしかしてさ……専務のことが、好き?」
その言葉に、蛍里は目を見開いた。
もう、本当のことを言ってしまって、いいの
だろうか?一瞬、そう迷いながらも、蛍里は首
を縦に振る。滝田が息を漏らして、笑んだ。



