「一斗は経験豊富だもんね」 『なんだそれ』 「べつに」 悔しいじゃん。 わたしは何をしても初めてしかないのに、一斗の初めては終わっちゃってるなんて。 『なあ。あのオッサン近くにいんのか』 坂田のこと? 「ううん。この頃は部屋に入ってこなくなったよ」 『へえ』 「最近まで一緒に寝てたりもしたんだけどね」 『はあ?』 「絵本読んでもらったり」 『あー。そういう……』