「はぁぁぁ、自分の才能がうらめしい……もしかしなくとも神様に嫌われているのかしら」

 賀茂川の河川敷で、絃乃(いとの)は大きな独り言をぼやく。
 その場にしゃがみこみ、ほころびかけた蕾に向かって話し出す。

「あなたはどう思う? 好きな気持ちは誰にも負けないのに、花器を生ける器量がゼロの私はこれからどう生きたらいいのかしら。美しさを半減……いいえ、先生いわく『花を冒涜したかのような出来映え』と評される女など、誰も嫁に貰いたがらないわよね」

 群生する待宵草をぼんやりと眺める。

(つくづく、自分の不器用さに悲しくなってくるのだけど)

 夕刻に咲き始め、朝にはしぼんでしまう黄色の花弁を指先でつつく。
 美しく生けようとする気合いだけは充分だったが、いざ完成したものを見ると、級友の作品と比べるのもおこがましい。
 そして今日、今まで誰も遠慮していた一言を、とうとう先生に言わせてしまった。

(思い描いたとおりに、どうしてならないの……)

 何度目かのため息がもれる。

「私もお手本の先生みたいに飾れたら素敵よね。いつか、この夢が叶うように、あなたも応援してくれる?」

 初夏の風に揺れる花を見つめるが、当然返事はない。
 そろそろ帰ろうかと暮れゆく空を見上げる。
 朱色の空に輝くのは白い月。起き上がり、小袖と藤紫の行灯(あんどん)袴についた土埃を払う。

「花との語らいは終わったのですか?」
「……っ……!」