「はるかー!追試合格だった!」
水曜日のお昼休憩。
ひと足早く中庭で待っていてくれたはるかに、私は今しがた返されたばかりの追試のテストを見せた。
「えっ、92点とか凄すぎない!?」
信じられないとばかりに目をまん丸にするはるか。
追試は昨日の放課後に行われて、合格点は70点。
テストのおさらいだし、比較的問題は簡単になっている。とはいえ、数学が苦手な私にとって、この点数は快挙。
それもこれも……。
「橘くんに教えてもらったんでしょ?良かったね!」
「あ、うん……」
目をキラキラさせて言うはるかに、私は少し濁った返事をした。
私が追試をこんな良い点で合格することが出来たのは、紛れもなく冬哉のおかげ……なんだけど。
「あっ、噂をすれば橘くんだよ!おーい!」
見つけた人の姿に、はるかは腰掛けていたベンチから立ち上がって、ぶんぶんと大きく手を振った。
振り返って見てみれば、購買へでも行くつもりだったのか、本当に冬哉。
いつもなら私以外の女子に手を振られたところで、無視以外の選択肢なんてないのだけど……。
「ここで昼飯?」
どういう心境の変化なのか、冬哉はこっちへ向かって歩いてきて、更には声をかけてきた。