☆☆☆

おかずを作る手際はなれたものだった。


なにせ、あたしは物心がつく前から両親のお店を遊び場として使っていた。


時にはお客さんにお水を運んだり「いらっしゃいませ」と、つたない言葉で挨拶もしていた。


そのたびにお客さんから頭をなでてもらっていた記憶がある。


料理がひとつできるたびにいい香りがキッチンに漂いはじめる。


最初にシチューを作り、クツクツと煮込んでいる間にから揚げを上げる。


それらができたらシーザーサラダをつくり、冷蔵庫で保管。


最後にオムライスのチキンライス部分だけ作って、食べる前にトローリ卵を焼いて乗せれば完成だ。


「さて、最後はっと……」


呟いて冷蔵庫をあける。


中にはスポンジと生クリームとフルーツが入れられている。


あたしはそれらを作業代の上に取り出して眺めた。


誰でもできそうなケーキつくりは、見栄えが命だ。


とにかく綺麗に丁寧にクリームを塗り、フルーツを盛り付けていく。


結構慎重に作業をしたつもりだけれど、できあがったのは15分後だ。


そのくらい簡単に作ることができる。


「結構いいんじゃない?」


指についたクリームをなめとって、自画自賛する。