「ひまりちゃん、あれ乗ろう!」

「うん!」


初めての遊園地は、本当に楽しかった。


下から見上げた時は怖そうに見えたジェットコースターもとっても大好きになった。


純大ともう一回乗ろうって
何度も乗った。


そんな私達をグロッキーな顔で見ている有もちょっと面白かった。


「ママーあれ乗りたい!」


小さい頃の記憶はない。

もしかしたらママとパパとも行ったことあるのかな。


親子連れの姿を見かける度に
胸がチクリと傷んだ。


「ねー、ひま。ソフトクリーム買ってきてよ。」


そんな気分になっているとも知らずに
有は人の背中にもたれかかって休憩を始める。


「…ハイハイ、わかりました。」


有をあしらって、向こうの売店に行こうとした瞬間、腕を掴まれた。


「そんな顔すんなって。また来ような。もう、一人じゃないから。」


分かっていないと思ったけど、
やっぱりこの男はちゃんと人のことを見てる。


とても敏感で優しい人。


「分かってる…。ありがと…」

「んー?なぁに?聞こえない〜」


このおちゃらけさえなければ。


「バカ!」