一見さんお断り風のバーに着くと
有は慣れた様子でお酒を頼む。


まもなく私の元にも
可愛らしい飲み物が差し出された。


「お酒?」

「もちろん♪」

有は嬉しそうに答える。


「次はたくさん飲ませるって言ったでしょ〜」


有は上機嫌で一杯目のビールを飲み干した。


何か聞いてくるのかと思ったのに
有はただ鼻歌を歌いながら、ゆっくりお酒を楽しんでいた。


調子くるう…


「…ひま。ありがとね。」


たわいも無い話をしながら
一時間くらい経った頃、

有は少しトーンを落としてつぶやいた。


「え…。」

「この仕事引き受けてくれて。」


視線を落としたまま、一層トーンを落としてつぶやいた。


「ひまが来てくれて、本当によかったよ。」


有はバカだ。

嘘になれている。

私と同じ。
辛いことに蓋をしようとしている。


「嘘つき…。」


有は杏奈さんが居なくなって、なんの傷も癒えていない。


そんなの見てれば分かるんだよ。