これまで戦ってきた魔物達よりも知能が高く、しぶとい敵に苦戦しながらも私達は力を合わせ敵を薙ぎ払い続けた。


魔王の右手となる魔王軍四天王の二人が私達の前に立ち塞がり、行く手を阻む。


「っ……!」


「アイリーン!ここは俺たちに任せて先に行け!」


「でも!」


「甘く見ないでくださいよ。私達だって貴女の隣で貴女を支えてきた強い仲間なんですからね?」


「お前が魔王の息を止めろ!それがお前に課せられた使命だろ!勇者アイリーン!!」


「っ……!分かった!負けたら承知しないからね!」



頼れる二人の行動が無意味にならないように、敵の攻撃を躱しながら魔王城の最上部……魔王城の大広間の扉の前へと遂にたどり着く。


邪気や殺気が入り乱れた空間にいるだけでも今にも足が竦みそうになるのを、自分を鼓舞しその扉を勢いよく開けた。


渦巻く魔力に思わず目を細めると、立ち込める黒い霧の中にその男の影が動いた。


「魔王スレーン……今ここであんたを討つ!」


聖剣で霧を切り裂くと、少し長めの黒髪がチラリと見えた。


そしてようやく対面し……長い年月を掛けてこの男の命を断つためにどれだけの時間を費やしたのかを一瞬にして忘れそうになる。



「待っていたぞ、勇者」



その声は少し癖が違うとは言えども馴染みがある声で、不覚にも聞いていて心地がいいと感じてしまう。


綺麗な澄んだ瞳も雪のように白い肌も、額に生えた二本の角も……全ては違うのに、どこか懐かしい面影がある。


魔王スレーンも、怪しげな笑みを向けきていたはずなのに、私の顔を見るや否や一歩後ろへと後ずさった。