ゴゴゴ……と地響きの低い唸り声がこだまし、クリスタルの欠片が落ちてくる。


「なっ何……?!」


「洞窟が崩れる!ちっ……転移魔法を発動する!二人共俺の傍へ!」


地面に描かれた魔法陣に包まれるようにして、一瞬だけ体が灼熱の炎に包まれたかのように熱くなるけれど、すぐに収まって王国の聖堂に立っていた。


騎士たちが慌てて走り回っている中、一人の騎士が私達の帰還に気づき現状を報告した。



「アイリーン殿……!魔王城が王都上空に出現!結界を魔導師たちによって張らせてある状態ですっ」


「魔王城が……?!」



聖堂の窓から外を見れば、騎士が言うように王都を覆い被さるように魔王城が浮かんでいた。


どうやら私達が留守の間を狙って攻めてきたのだろう。


生憎だけど……こちらも準備は整ったのよ。



「アイリーン」


「父上!」



聞きなれた凛とした父の声に振り返ると、指揮を取る父が急ぎ足で近づいてくるや否や私の肩を掴んだ。



「この国の事は私に任せろ。お前は己の使命を果たす……いいな」


「はい。そのつもりです。父上、国のことは頼みました!――行くよ!」



スコーリアとジュゼンに合図を送り、聖堂の外へと飛び出すと結界の外には魔物が戦闘準備を整え始めている。


王都は混乱に包まれ悲鳴があちらこちらから聞こえてくる。


――皆が魔の手が迫り……震え、泣き、怯えている。


罪のない人々を傷つけるなんて、絶対に許さないんだから。



「これが俺たちの最後の戦いになる。生きてここに戻ろう」


「もちろんです」


「頼りにしてるわよ、二人とも」



ジュゼンの空間転移魔法により王都に張られた結界の外へと出ると、そこからは魔王城目掛けて剣を振るった。