よし、これまでの記憶もちゃんとある。


胸に手を添えて自分の鼓動が確かに動いていることを確認して、一つ息を吐き出した。


「心配かけちゃってごめん。勢い余っちゃった」


「大丈夫ならいいんだけど……それにしても思い出したって、何を?」


スコーリアの純粋無垢な瞳に真実を覗かれそうになるのが怖くて、私は無理やり笑って何でもないと答えた。


こんなタイミングで前世の記憶を思い出すなんて……間が悪いというかなんと言うか。


私は元カレと別れた直後、トラックに轢かれてそのまま死んで神様と名乗るおじいちゃんに事細かに説明を受けて……それで今こうして第二の人生を送っている。


これが第二の人生といっていいのかはよく分からないけれど、私は私だ。


性格は昔の自分と同じ部分は少し……いや、ほぼ一緒か。


顔だって鏡で見る姿に既視感があったのも、同じような顔の作りをしていたせいだったのかとようやく理解出来た。


転生しても尚昔の自分を引き継ぐって、ちょっとおかしな話じゃない?まあ、いいか。


さて、ここで前世の記憶を取り戻したなんてことを言ったら二人の混乱を招くだけだ。ここは黙っていつか打ち解けるその日が来たら笑い話として聞いてもらおうかな。


手にした聖剣が自分の手に馴染むのが分かり、立ち上がった次いでに少々剣を振るう。


私がこの剣を必要とするように聖剣も私が現れるのを、ここでずっと待ちわびていたのだろう。


「これで全ての準備は整ったわね」


二人に向き直って三人同時に一つ首を縦に振った。


「魔王を討伐してこの世界に平和を」

「そして光の加護を」


私達三人でこの世界の平和と命を守るために。


決意を固めた私達は顔を見合わせて、笑顔を零したその時だった。