「い、いえそんな、お気遣いなくっ……!」

「ふふっ、で、奈結ちゃん、僕と婚約しないー?」

「へっ!?な、なに言って——」

「だめに決まってるだろ!!このバカ兄貴が!!」

 抱きしめる力を強めて、奈結を胸に埋める。

「……なーゆ、ちょっとお目目瞑っててね」

「へっ?どうして……?」

「奈結が見ると怖くなっちゃうと思うからね」

 ……まぁ……奈結はケンカじゃめちゃくちゃ強いから、見慣れてるかもだけど……。

「……ケンカ……するの……?」

 あー……またそのズルい上目遣い……。

「ふふっ、奈結を取られたくないからね」

 一応、金持ちの息子だから、狙われないようにとか言って護身術は習っていた。

 まぁ……そんなの兄貴も一緒だけど。

「えー俺争い事嫌い〜」

 体に思い切り力が入って手に血管が浮き出てきた。

 コイツ……昔から、ムカつくヤツ……。

 多分、奈結のことがかかってるからイラつくんだ。

「うっ……くるちぃ……」

「あ、ご、ごめん……」

「う、うんっ……あの、夜毎、あんまり、怒らないでっ……」

「……ごめんね、でもこればっかりは無理だよ」

 兄貴に冗談でも奈結を取られたくないから……。