占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ルーカス……大好きよ」

〝好き〟の種類がなんなのかなんて、わからない。けれど、無意識のうちにそう呟いていた。さすがに目を開けている自信はない。そっと目を閉じながら、カエルになったルーカスの口元に、自分の唇を近付けていく。そっと触れたそこが、カエルでいう唇なのかはよくわからないのはご愛嬌だ。


ああ……私のはじめての口付けは、中身はルーカスとはいえ、カエルだった……ぬめぬめの、ドブ色の……



唇を離して、そっと目を開けた。


そして……落胆した。


私の手の上のカエルは、目を閉じる前と全く変わらず、ドブ色のカエルのままだ。クリクリとした目から、その心情を読み取ることはできない。けれど、彼の方はもしかしたら申し訳なく思う私の気持ちを感じているかもしれない。

「ルーカス、ごめ……え?」

やっぱり私がルーカスに抱いていたのは、親愛の情だったのか。私は、自分でも持て余し気味のこの気持ちの答えが欲しかっただけなのかもしれない。この大事な時に、私の身勝手な考えで彼を振り回してしまったことを謝ろうとしたその時、カエルの周りが温かな光に包まれた。

驚く私をよそに、カエルがポンと跳ねて地面に着地した。その周辺は次第にぼやけていき、ハッと気が付いた時には、人間の姿のルーカスが立っていた。

「ルーカス?」

当の本人も、状況を呑み込めていないのか、自分の手足を交互に見つめていた。でも、私が呼びかけると、途端に満面の笑みを浮かべた。

「ライラ!!」

ガバリと抱き付いてくるルーカスは、驚きのあまり、身動きひとつできない私の首筋に、グリグリと頭を擦り付けてくる。

「ライラ。俺の番。俺の唯一。愛してる」

いつもこうされていることのはずだけど、どこかいつもと違う。真っ直ぐに気持ちを伝えてくるルーカスに、適当に流そうなんて少しも思えない。なんだか心が満たされ、思わず自分の腕を彼の背中に回していた。