占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「わかった。外に出るよ」

すべての迷いをぐっと呑み込んだルーカスは、私の手をぎゅっと握り直した。

「どんな結果になっても、俺はかまわない。ライラを信じてる」

真っ直ぐに向けられる視線を正面から受けて、頷き返す。

「いくよ」

迷いのなくなったルーカスの行動は素早かった。入り口から外に出ると、掴んでいた私の手をパッと放して、木々に覆われた空を見上げる。そして、ちらりと私に視線を向けると、この場にそぐわないぐらい穏やかな笑みを浮かべた。

みるみる姿を変えていくルーカスを、一度見たことがあるとはいえ、やっぱり信じられない気持ちで見つめた。

ゆっくりと地面に座るカエルに近付いて、隣にしゃがむ。相変わらず、カエルは苦手だ。目の前にいるクリクリした目のカエルが、本当はルーカスだってわかっている。それでも怯んでしまうのは、隠しきれてないかもしれない。

でも、カエルにならないように気を付けていた彼を、無理矢理雨の中に連れ出したのは私だ。覚悟を決めて従ってくれた彼に、今度は私が覚悟を見せる時だ。


「ルーカス……私、本当にカエルは苦手なの。小さい頃、いきなり飛び出してきて服にへばりつかれて以来、トラウマになってて……でも、あなたは本当はカエルじゃない。だから、大丈夫よ」

まるで自身に言い聞かせるやうに呟いて、そっと手を伸ばす。指先に触れたのは、思っていた通りぬめぬめで、思わず手を引っ込めそうになってしまう。でも、それを堪えて両手で掬い上げるようにして、ルーカスを持ち上げた。
うん、まさしくドブ色だわ。


手足が震えてしまいそうなぐらいの恐怖で必死に耐えていた。けれど、じっと覗き込んだその大きな瞳の中に、意志の強いルーカスの光を認めた途端、恐怖心は綺麗さっぱり吹き飛んだ。