占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

思わず部屋を飛び出した。

「ルーカス!!」

食堂へ足を向けたていたルーカスは、振り返って私を見ると、驚きに目を見開いた。

「どうした、ライラ」

「来て」

戸惑うルーカスの腕を掴むと、なにも言わずに食堂へずんずんと引っ張っていく。〝ライラ?〟〝どこへ行くんだ?〟という彼の疑問には、一切返さない。

どうやら私が外へ向かっているようだと気付いたルーカスが、さすがに足を止めた。

「ライラ、どういうつもりだ?」

決して責める雰囲気ではない。戸惑いながら、けれど外に出るわけにはいかないと、警戒しているのが伝わってくる。

「ルーカス、来て」

外へついてくるように促す私を、〝だめだ〟と止めるルーカス。力では敵うわけがないことに焦れて、思わず大きな声を上げた。

「ルーカス・サンミリガン!!あなたが私を番だというのなら、私を信じて、今すぐ外に出て!!」

私の指し示す先は、少し前と変わらず、ずっと雨が降り続けている。そんな中彼が外に出れば、当然カエルに変わってしまう。

「ライラ……すまない。俺が余裕のない姿ばかり見せてるからか?」

彼は、私のこの暴挙をどう思ったのだろうか?

「同情では、この呪いは解けないって、ライラも知ってるだろ?無理はしなくていいんだ。いや、して欲しくない」

「私にもわからないの。同情じゃないのかって言われたら、絶対に違うとは言えない。でも、それだけじゃないのも確かなの。ルーカスに、これ以上苦しんで欲しくないって思ったら、居ても立っても居られなくなったの」

「ライラ……」

私だって、魔法が解けなかったらどうしようっていう、迷いや恐怖が少しもないわけじゃない。冷静に考えたら、今このタイミングで数時間とはいえ、ルーカスがカエル姿になることはまずいってわかるはず。でも、そんなことすら考えられないぐらい、頭の中はルーカスをどうにかしてあげたいってことでいっぱいだった。