「くそっ」
自室のドアに手をかけた瞬間、ルーカスの悔しそうな呻き声が聞こえた。なんて声をかけていいのかわからず、息を潜めて素早く部屋に滑り込んだ。と同時に、ガチャリとドアが開く音がした。ドリーが顔を出したようだ。
「オオカミの王子よ」
「ああ、ドリー。すまない、騒がしくして」
「いんや。客はおらんから、かまわんさ。そう焦るでないぞ」
「だが……アドルフが命がけで伝えた現状を、俺には自力で国に伝えることすらできないんだ。ここで指揮を取れと言われても、今の俺には本当にそれしかできない。それを気遣われてるようで……せめて、雨さえ降ってなければ……」
この雨の中、一歩でも外に出ればルーカスはカエルの姿になってしまう。そうなれば、しばらくの間指揮すら取れなくなってしまう。彼の声を聞いていると、その現実が私のも突き刺さってくるようだ。
「そうだな。だが、今できる精一杯のことをやっとるんだろ?」
「それは、もちろんだ。ただ……呪いを受けてなければできていたことを思うと……やりきれないな」
彼がカエルの魔法をかけられて、もう2年弱経っている。その間、私が知らないだけで、ルーカスはこうして何度も苦しんできたのかもしれない。
いつも明るいルーカスに、そんな思いなんてして欲しくない。ちょっと子どもっぽいところのあるルーカスだけど、身分に関係なく、誰とでも気楽に接することができて、少しも王子様っぽさがない気さくさで……でも、いざとなったら不正や悪さを絶対に許さないと、正義感が強くて……そういう彼の姿は、素直にかっこいいと思うし、憧れもする。けれど、こんな苦しそうなルーカスは見たくない。
「呪いさえ解ければ……」
ルーカスの声に、胸が苦しくなる。〝そんなに焦らさんな〟と、慰めの声をかけて、ドリーは部屋にもどったようだ。
自室のドアに手をかけた瞬間、ルーカスの悔しそうな呻き声が聞こえた。なんて声をかけていいのかわからず、息を潜めて素早く部屋に滑り込んだ。と同時に、ガチャリとドアが開く音がした。ドリーが顔を出したようだ。
「オオカミの王子よ」
「ああ、ドリー。すまない、騒がしくして」
「いんや。客はおらんから、かまわんさ。そう焦るでないぞ」
「だが……アドルフが命がけで伝えた現状を、俺には自力で国に伝えることすらできないんだ。ここで指揮を取れと言われても、今の俺には本当にそれしかできない。それを気遣われてるようで……せめて、雨さえ降ってなければ……」
この雨の中、一歩でも外に出ればルーカスはカエルの姿になってしまう。そうなれば、しばらくの間指揮すら取れなくなってしまう。彼の声を聞いていると、その現実が私のも突き刺さってくるようだ。
「そうだな。だが、今できる精一杯のことをやっとるんだろ?」
「それは、もちろんだ。ただ……呪いを受けてなければできていたことを思うと……やりきれないな」
彼がカエルの魔法をかけられて、もう2年弱経っている。その間、私が知らないだけで、ルーカスはこうして何度も苦しんできたのかもしれない。
いつも明るいルーカスに、そんな思いなんてして欲しくない。ちょっと子どもっぽいところのあるルーカスだけど、身分に関係なく、誰とでも気楽に接することができて、少しも王子様っぽさがない気さくさで……でも、いざとなったら不正や悪さを絶対に許さないと、正義感が強くて……そういう彼の姿は、素直にかっこいいと思うし、憧れもする。けれど、こんな苦しそうなルーカスは見たくない。
「呪いさえ解ければ……」
ルーカスの声に、胸が苦しくなる。〝そんなに焦らさんな〟と、慰めの声をかけて、ドリーは部屋にもどったようだ。


