占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「アルフレッドのことは、正直もう怒ってなんてない。婚約を破棄された時、私の言葉を信じてくれなかった彼に、もう未練もなにもなくなった。今現在、彼に言い寄られるのは面倒だけど、友人として近くにいることは嫌じゃない。こういう関係が続いて欲しいって思う。まあ、彼は次期国王なんだから、そんなことは無理かもしれないけど。私はただ……怖いの」

思わず震えた語尾に、ルーカスは私の肩をぎゅっと抱き寄せた。それを突っぱねようとは思わない。

「私ね、彼と婚約することもいずれ破棄されることも、事前に水晶で知っていたの。だから、破棄されても知ってたんだから平気だって思ってた。ううん。きっと、自分が傷付かないように、平気だって自身に言い聞かせてたんだと思う。
けれど、実際は全然そうじゃなくて……あっ、これは彼に対する気持ちのことじゃないのよ。なんていうか……信じてもらえなかった辛さとか、簡単に切り捨てられてしまったという現実とか」

ルーカスは正面から私を抱きしめた。どこか早急で、少しだけ荒々しく。その逞しい胸元に、グッと顔を押し付けられた。

「辛かったな」

「辛かった?」

アルフレッドにも国にも、早々に見切りをつけたのは、私の判断だ。ここに来てから、大変なこともたくさんあった。けれど、親切な仲間に囲まれて働くことも楽しくて……後に感じた辛さといえば、父に対する想いだけ。

「そうだ。幸せになれない未来を、何年も自分の内に抱えていたんだろ?誰にも言えないまま。幼いライラが、どれだけ苦しんできたかと思うと……もっと早く、そんな思いをさせる前に俺が出会っていたら、守ってやれたのに」

「ルーカス……」

「それでも、ライラの占いは外れないから、未来は変わらなかったのだろう。でも、今なら俺が隣にいてやれる。番としてでも、そうでなくても」