占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

マリアーナを連れ出すにあたって、アルフレッドは彼女を王女として相応しい扱いをした。出発の朝、グリージアから馬車をよこし、彼女のために侍女も付けた。持ち込んだドレスはシンプルなものだったけれど、一目で高価なものだとわかった。

「わ、私、こんなふうにしてもらえるような立場じゃないです」

突然のことにすっかり怖気ついたマリアーナの背中を、私とドリーが押す。

「ヨエルの代理の保護者だとでも思えばいいのよ。それに私、お父様がどんな暮らしをしているのか知りたいの。帰ったら教えてね」

「どうせ、そこの王太子さんは暇してるんだ。甘えときゃいいんだよ」

アルフレッドの扱いはともかく、ドリーの言葉に賛成だ。

「ヤツがいなければ、俺がライラを独占できるしな」 

ルーカスの発言は無視だ、無視。

まあ、そんなことを言っているルーカスも、侵入者の情報収集をしたり、手立てを打ったりと、いつも忙しそうにしてるけど。



「じゃあ、気を付けて。いってらっしゃい」

ヨエルに続いて、マリアーナが旅立っていくのを見送った。

マリアーナが不在の店内は、やっぱり少し寂しくなった。彼女はすっかりここの一員になっていたのだと、改めて思う。

「あれ、マリアーナちゃんは?」

なんて尋ねてくる常連客もいた。そして、もう一人のことも。

「グリージアのお偉いさんもいないのか。それだけで、ずいぶん落ち着いちゃうな」

アルフレッドの存在もまたこの店の名物で、それなりに存在感が大きかったのかと思わされた。