占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

そこでアルフレッドが目を向けたのは、ドリーだった。対するドリーは、なんだかおもしろそうに見つめ返している。ドリーはまるで、アルフレッドが言わんとしていることがわかっているようだ。

「ドリー、色を変えることは?」

それだけで、彼がなにをしようとしているのかが察しられる。驚きで目を見開いたマリアーナが、アルフレッドを凝視している。

「まあ、できなくはない。ただし、あくまで色だけだぞ。顔の作りを変えることはできん」

「ああ。応急処置程度だが、とりあえず十分だ」

ドリーにそう頷いたアルフレッドは、ヨエルとマリアーナに向き直った。

「追っ手の標的が本当に2人だとすると、原因となった〝色〟を目印にしていることが考えられる。おそらく、2人組のうち1りはマリアーナを見分けられる人物。カレルヴォがマリアーナの存在を隠しているなら、その特徴を知っているのはごく一部。同行する騎士は護衛程度で、そもそも何を追っているのかも知らされてないかもしれん。だとしたら、小手先とはいえ、まずはその特徴を変えてしまうのも手だ」

〝どうだ?〟と問いかけたのは、マリアーナ本人ではなく、実質保護者であるヨエルにだった。ヨエルはしばらく考えを巡らした後、マリアーナを見つめた。2人の間に言葉は交わされない。けれど、そこに確かに存在する〝信頼〟が、言葉はなくとも正確に意思を伝え合っているようだ。
熱のこもった視線で見つめ返すマリアーナに、ヨエルは小さく頷いた。

「……いろいろと対策を考える必要はあるが……ドリー、お願いできるか?」

ヨエルの決断に、ホッとする。

「希望はあるか?マリアーナ」

早速実行するようだ。全員の視線がマリアーナに集まる。アルフレッドは自分が言い出したことなのに、なぜかそわそわと不安そうにしている。