「あっ、この人達、爪が黒く塗られてるわ。なにこれ?なにか、おまじない的なものかしら?」
ひゅっと息を呑んだヨエルに、驚いた全員の視線が集まる。横に座るマリアーナは、顔を青ざめて俯いていた。
「どうかしたの?」
「あ、ああ」
明らかに様子がおかしい2人。マリアーナはともかく、ヨエルが珍しく動揺を隠しきれていない。
「ヨエル?」
「……おそらくだが、その者達はシャトラス王国の人間だ」
「なんだって!?」
「どういうことなんだ?」
ルーカスとアルフレッドが、俄に慌て出す。このタイミングでこの大陸にシュトラスの人間が来る。しかも、なにかを……誰かを探すような雰囲気で。自ずと行き着く答えは決まっている。
「2人を追っているということか」
ここにいる全員が導き出したであろう答えを、アルフレッドが声にした。
緊張を孕んだ声音に、場の雰囲気も張り詰めていく。2人のことを追う理由は、一体なんだというのか。
「ヨエル、爪を黒くする理由ってあるかしら?」
「それは、既婚者の証だ。前にも言った通り、シュトラスは不貞に対して厳しい国だ。他者からの無用なアプローチを避けるためにも、自らが既婚者であることを示すために、様々な方法を使う」
その一つが、男性の爪を黒く塗るのだという。他にも、サンミリガンのように指輪もはめるが、簡単に外せてしまうためこれだけでは不十分なのだという。女性側は、耳に簡単には外せないカフスをはめるという。
「そうやってアピールしてもなお、不貞をはたらく者はいる。だが、王妃はそうでなかった。わかっていても、王は信じきれなかったのだろう」
シーンと静まり返ってしまった。ヨエルとマリアーナ、王妃エレオノーラのことを思うと、やりきれなくなってしまう。
ひゅっと息を呑んだヨエルに、驚いた全員の視線が集まる。横に座るマリアーナは、顔を青ざめて俯いていた。
「どうかしたの?」
「あ、ああ」
明らかに様子がおかしい2人。マリアーナはともかく、ヨエルが珍しく動揺を隠しきれていない。
「ヨエル?」
「……おそらくだが、その者達はシャトラス王国の人間だ」
「なんだって!?」
「どういうことなんだ?」
ルーカスとアルフレッドが、俄に慌て出す。このタイミングでこの大陸にシュトラスの人間が来る。しかも、なにかを……誰かを探すような雰囲気で。自ずと行き着く答えは決まっている。
「2人を追っているということか」
ここにいる全員が導き出したであろう答えを、アルフレッドが声にした。
緊張を孕んだ声音に、場の雰囲気も張り詰めていく。2人のことを追う理由は、一体なんだというのか。
「ヨエル、爪を黒くする理由ってあるかしら?」
「それは、既婚者の証だ。前にも言った通り、シュトラスは不貞に対して厳しい国だ。他者からの無用なアプローチを避けるためにも、自らが既婚者であることを示すために、様々な方法を使う」
その一つが、男性の爪を黒く塗るのだという。他にも、サンミリガンのように指輪もはめるが、簡単に外せてしまうためこれだけでは不十分なのだという。女性側は、耳に簡単には外せないカフスをはめるという。
「そうやってアピールしてもなお、不貞をはたらく者はいる。だが、王妃はそうでなかった。わかっていても、王は信じきれなかったのだろう」
シーンと静まり返ってしまった。ヨエルとマリアーナ、王妃エレオノーラのことを思うと、やりきれなくなってしまう。


