占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「……季節は、今から少し先。薄着の頃よ。国境近辺で……ああ、いたわ。今見えているのは、男性2人組。庶民のような服装をしているものの、醸し出す雰囲気に違和感が……1人は高貴な雰囲気よ。もう1人は目付きも鋭くて、騎士のようだわ。国境を行き来する人達に、ひたすら目を向けてるの。なにか……誰か、人を探してるのかしら?」

「その2人の容姿とか、詳しい服装は?」

「容姿……2人とも、黒っぽい色の短髪よ。1人は白いシャツにベージュのズボン。もう1人も同じようなものね。色は上がクリーム色で、下は濃い緑ね」

「他に特徴はないか?どんなことでもいい」

思いの外食い付いてくるヨエルに驚きつつ、さらに目を凝らして探っていく。

「見えるところに、武器を持っている様子はないわ。強いて言うなら……そうねぇ。シャツの襟があまり見ない形かも。この辺りの男性もののシャツの襟って、折り返しが小さめなものが主流でしょ?ああ、ちょうど今、ルーカスが着ているようなね」

全員の視線が、さっとルーカスに集まる。

「サンミリガンの、一般的なデザインだな」

珍しくもなんともないと付け加えたルーカス。

「グリージアも、同じようなものが多いな」

頷くアルフレッド。彼も、たまにこんなシャツを着ている。

「それがね、今見えている2人が着ているものは、襟がずいぶん大きく折り返されてるの。この辺りでは、あまり見ないデザインね。あとは……」

水晶に集中する私は、ヨエルが顔を強張らせたのも、マリアーナがギュッと手を握ったことにも気が付いていなかった。