占いお宿II 新たな契りを結ぶ時

「ルーカス、私、サンミリガンに行ったことがないの。だから、私でもわかる国境近辺を見てみたの」

「なにか見えるか?」

私の邪魔をしないように気を付けつつ、それでも僅かに急かすような口調のルーカス。

「通りがかる人達は……とても薄着ね。ということは、今からそれほど遠くない時期ね」

今はまだ、若干肌寒くて、軽く上着を羽織る季節だ。ということは、もう1〜2ヶ月後ぐらいのことだろう。

「あれはなにかしら?」

「どうした、ライラ」

「明らかに服装が周りと違う2人が、サンミリガン側からグリージアの様子を伺うように見てるわ。庶民のように見せかけてるけど……顔立ちもこの辺りの人とは少し違うかな。あと、雰囲気」

「雰囲気?」

なんて言ったらいいのか。言葉を探しながら、ルーカスに目を向けた。そらから、ジャレットにも。

そうか。答えはこんな身近にあったわ。

「あなたやジャレット、それからアルフレッドと同じなのよ」

「同じ?」

アルフレッドを同列に挙げたことが気に食わなかったのか、ルーカスが僅かに顔を顰めた。そんなに目の敵にしなくてもいいのに。

「そうよ。あなた達って、ここへ来る時って王族としてかしこまった格好をしないでしょ?庶民と同じ服装をしてる」

「そうだが……その方が身分を隠せるし、気楽だからな」

身分を隠そうとする意思や意図は、全く感じたことがなかったけど?なんて感想は、かろうじて胸の内に留めた。

「けれどね、見る人が見れば、明らかに雰囲気が違うのよ。なんていうか……隠しきれない高貴な雰囲気っていうのかしら?もしかしたら、そういう身分の高い人と接したことがあるから気が付くことなのかもしれないけど」

〝うーん〟と、ルーカスが首を捻っている。もっとわかりやすい例えはないかしら?


「あっ、そうだ。マリアーナを思い浮かべてみて」

「俺に、番以外の女性を思えと!?」

ああ、めんどくさい。こういうことを冗談抜きで言ってくるから困りものだ。番を見つけたルーカスの頭は、妙なスイッチが入ってしまったようだ。